TX沿線乳がん検診と検査|知っておきたい!女性の病気・検査方法・つくばエクスプレス線各自治体の乳がん検診

千葉大学医学部附属病院ブレストセンターの高田護です。
みなさんは乳がんのことをどれくらい知ってますか?みなさんは乳がん検診が無料ないしは格安で受けられることを知ってますか?乳がん検診の対象年齢じゃないからまだ大丈夫、と思ってませんか?


高田護
千葉大学医学部附属病院
ブレストセンター乳腺外科 医師
日本乳癌学会乳腺認定医
日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影医師


*先生のプロフィールは記事末尾をご参照ください
千葉大学医学部附属病院 ブレストセンター乳腺外科
*「女性特有の病気」のバックナンバー
第一回子宮の病気の原因と初期症状
第二回卵巣の病気の原因と初期症状

「女性特有の病気」、「不妊治療」に関する不定期コラムの第三回として、「乳がん」についてお届けいたします。

乳がんとは?

乳がんにかかる女性が増えているという話は聞いたことがあるでしょうか。乳がんは1996年に日本女性のがんの第1位となり、2008年には1年間に5万人を超える女性が乳がんと診断され、2020年には10万人を超えるのではと推定されております。いかに日本社会が高齢化しているとはいえ、高齢化の速度以上に乳がん罹患率が増加している様子がデータから読み取れます。
2017年の全年齢の女性の交通事故死は1,216人であったのに対し、同年の乳がん死亡者数14,653人でした。自動車事故にあっても死なないようにシートベルトを閉めている人は多いと思いますが、乳がんの早期発見のために乳がん検診は受けていますか?

*年代別に乳がんのリスク

乳がんにかかる割合は30歳代後半から増加します。そして40歳代後半から50歳代前半に1つ目のピークを迎えます。
<壮年期>
妊活を頑張っていたり、出産育児の真っ最中、子育てが忙しく、夫も働き盛り、住宅ローンや子供の学費の積み立てもあったり仕事や家庭に忙しくも充実した日々を送っている壮年期の女性に突然襲いかかってくるのが乳がんという病気なのです。
<閉経後>
閉経後の乳がんが非常に増えていることも知られております。これは欧米の乳がんに多い特徴ですが、日本の乳がんも「欧米化」が進んでいることを示しております。そしてこれは食生活が乳がんのリスクとなる可能性についても重要な示唆を与えてくれています。
<20歳代>
全体からの比率で見ると多くはありませんが、20歳代で乳がんを患うこともあります。乳がんは患者数が非常に多いため、若くして乳がんにかかる人々の数も無視できません。特に、検診対象年齢よりも若い女性は、乳がん検診の重要性を知る機会が多くありません。これは若い乳がん患者が病状の進んだ状態で発見されることが多くなる原因の1つになっております。若いからと安心しきっていた方がいたとしたら、とてももったいないと思います。
繰り返しになりますが、乳がんにかかる女性の数は増加しているのです。
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乳がん検診について

医療行為を受ける際には、乳がん検診のみならず、乳がん診断、治療すべてにおいてメリットデメリットを正しく理解する必要があります。

*乳がん検診のメリット

乳がん検診のメリットは早期発見により乳がんの死亡率を下げるという点に尽きます。
乳がんを早期に見つけることは治療を軽くすることにもつながり、患者さんの身体的経済的負担、さらには精神的負担も軽くすることが期待できます。

*乳がん検診のデメリット

乳がん検診のデメリットは乳がん検査の限界によるものです。現在存在するあらゆる検査に100%はあり得ません。偽陽性(乳がんではないのに要精密検査となること)や偽陰性(乳がんがあるのに異常なしとなること)により不利益を被る可能性があります。新型コロナウイルスのPCR検査で話題になった問題と同じです。

*乳がん検診の重要性

乳がんを早期に発見することは日本社会にも非常に大きな意味があります。早期発見により医療費は抑えられ、死亡率を下げることで残された家族の負担を減らしたり、がん遺児を減らしたり、総じて国民生活がより良いものとなることが期待されます。
がん検診はそういった国益を目的として、税金を投じた対策が講じられております。これは費用対効果を考慮した上で行われているため、がんを患っている確率の低い年齢層や、費用の高い検査は行われません。つまり、「まだ若いので乳がん検診対象者ではないから安心だ。」というのはある側面では正しいですが、別の側面からはまちがっているのです。というのは公費による検診は国益を目的としたものであるからです。「乳がんにかかる年齢ではないから」ではありません。検診対象ではない場合には乳がん検診が受けられる施設人間ドックで検診を受けることをお勧めします。たとえ20歳代であっても乳がんを患うことがあることは前述したとおりです。

*日本の乳がん検診受診率

筆者は以前アメリカに一住民として住んでいて、アメリカの健康保険に入っておりました。アメリカではほとんどの方が個人的に保険会社から保険を買います。なので、どういう検査、どういう病気が保険で何%カバーされるのかということを吟味して保険を選ぶのです。手厚いケアや幅広い疾患の診療や予防医療をカバーしている保険は高額なのです。最近はオバマケアが始まったり、低所得者向けのプログラムもありますが、乳がん検診受診率の人種差という米国のデータを見ると米国社会の闇を感じます。
日本は米国と比べると非常に恵まれた国であり、全ての女性が乳がん検診を受けることができます。にもかかわらず、日本の乳がん検診受診率は米国よりも低いのです。
もったいないことだと感じています。

*乳がん検診はどこで受けられる?何する?

まず、乳がん検診は各自治体によって若干内容や設定が異なります。自治体からクーポンや案内が送られてくることもありますが、一度検診を受けなければ次回から送られてこないことや、自分から情報を集めないと検診が受けられないこともあります。また検診が受けられる期間が限定されていることもあります。検診車が回ってくるケースや自分で検診が受けられる医療機関に予約を取った上で検査を受ける必要があるケースもあります。検診費用の一部の自己負担を求められる自治体もあります。
日本の乳がん検診は2年に1度マンモグラフィという乳房のレントゲン写真の検診が基本になります。また、効果は否定されておりますが視触診を行っている自治体もあります。また、限られてはいますが乳房超音波検診を行なっている自治体もあり、特に千葉県では54市町村のうち50市町村(92.6%)で乳房超音波検診を実施しております。(年齢などの細かい条件は各自治体窓口で確認してみてください)

*乳がん検診の方法

<マンモグラフィ検診>
マンモグラフィ検診は50歳以上で死亡率減少効果がしっかりと証明されております。40歳代でも死亡率低減効果が報告されております。しかし39歳以下でのマンモグラフィによる死亡率低減効果を検証した報告はありません。つまり、若い世代ではマンモグラフィが乳がん早期発見に有用である根拠がないのです。
死亡率減少が明らかではない限り公費の検診を導入することはできない、というのが厚生労働省の見解です。これは前述した国益を目的とした検診だからです。
<乳房超音波検診>
乳房超音波検診は死亡率低減効果がまだ証明されておりません。それはお胸が大きくて検査が大変な欧米人のデータが少ないこと、良性の変化が要精密検査になってしまうこと、施行者の技量に左右されることなどが理由だと考えられます。
つまりマンモグラフィは40歳以上で有用、乳房超音波はあまり有用ではない、というのがエビデンス(証明された根拠)です。

*日本の若い女性に適した検査

では、日本の若い女性の検診はどうしたらよいのでしょうか。
日本のいわゆるママ世代の若い女性の乳房は高濃度(dense)であることが多く、マンモグラフィには不向きです。若い年代の乳がんを見逃すことなく早期発見するには、超音波検査は最も適した検査の一つと言えます。「死亡率低減効果が証明されていない」ということは公費を使った集団検診をおこなう根拠が不足しているということを意味している一方で、「あなたにも有用ではない」ということを意味しているわけではないのです。

ともかく、自分の自治体の乳がん検診の情報をまずはチェックしてみることをお勧めいたします。乳がんの臨床に携わっておりますと、芸能人や有名人が乳がんに罹患し、ニュースになると検診を受ける方が急増しますが、その熱も一過性であり、半年から1年もすると受診者が徐々に減る、ということをよく経験します。
ぜひ自治体の補助をうまく活用しながら定期的乳がんの検診を受けることをお勧めします。

今回は乳がんの疫学と検診について書かせていただきました。
また機会がありましたら次回はまた別の話を書いてみたいと思います。
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TX沿線・各自治体の乳がん検診について

*茨城県 つくば市(つくば駅 研究学園駅 万博記念公園駅 みどりの駅 みらい平駅)

<集団検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
超音波 36・38歳 1,500円
超音波とマンモグラフィ 40~64歳の偶数年齢 3,000円
マンモグラフィ 66歳以上の偶数年齢 1,500円

<医療機関検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
超音波 36・38歳 2,000円
超音波とマンモグラフィ 40~64歳の偶数年齢 3,500円
マンモグラフィ 66歳以上の偶数年齢
70歳以上
1,500円
無料

<参考>つくば市 乳がん検診の実施(36歳以上)

*茨城県 守谷市(守谷駅)

<集団検診・医療機関検診>※集団検診と医療機関検診ともに同額

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
超音波 30~40・42・44・46・48・50・52・54・56歳 820円
マンモグラフィ2方向 41・43・45・47・49歳 1,330円
マンモグラフィ1方向 51歳以上の奇数年齢
75歳以上
820円
無料

<参考>守谷市 乳がん検診(医療機関検診)

*千葉県 柏市(柏たなか駅 柏の葉キャンパス駅)

<集団検診>※隔年検診(2年に1回)

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
超音波 40歳代 1,200円
マンモグラフィ1方向 50歳以上
70 歳以上
1,200円
無料

<医療機関検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
超音波 40歳代 集団検診でのみ実施
マンモグラフィ1方向 50歳以上
70 歳以上
1,200円
無料

<参考>柏市 令和2年度 乳がんあいだの年検診

*千葉県 流山市(流山おおたかの森駅 流山セントラルパーク駅 南流山駅)

30~39歳の方の乳がん検診は、 超音波検査(集団検診)または視触診検査(個別検診)のどちらかの選択制。
<集団検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
超音波 30~39歳 400円
検診契約医療機関でのみ実施 40~49歳    
マンモグラフィ検査「乳房X線撮影・1方向」 50歳以上
※マンモグラフィ検査は、隔年(2年に1度)の実施。
400円

<医療機関検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
視触診 30~39歳 300円
マンモグラフィ2方向 40~ 49歳
※マンモグラフィ検査は隔年(2年に1度)の実施。
700円
集団検診でのみ実施 50歳以上    

<参考>流山市 乳がん検診(個別・集団)

*埼玉県 三郷市(三郷中央駅)

<集団検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
マンモグラフィ検査2方向 40~49歳
※隔年(2年に1度)の実施
1,050円(三郷市国民健康保険加入者)
2,100円(社会保険等加入者)
マンモグラフィ検査1方向 50~74歳
※隔年(2年に1度)の実施
850円(三郷市国民健康保険加入者)
1,700円(社会保険等加入者)
マンモグラフィ検査1方向 75歳の方・後期高齢者医療保険加入者・生活保護受給者 無料

<医療機関検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
マンモグラフィ検査2方向 40~49歳
※隔年(2年に1度)の実施
1,050円(三郷市国民健康保険加入者)
2,100円(社会保険等加入者)
マンモグラフィ検査1方向 50~74歳
※隔年(2年に1度)の実施
850円(三郷市国民健康保険加入者)
1,700円(社会保険等加入者)
マンモグラフィ検査1方向 75歳の方・後期高齢者医療保険加入者・生活保護受給者 無料

<参考>三郷市 健康診査・がん検診の内容

*埼玉県 八潮市(八潮駅)

<集団検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
問診・視触診・X線検査(集団検診のみ自己検査法を実施) 40歳以上
※隔年(2年に1度)の実施
1,740円

<医療機関検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
問診・視触診・X線検査 40歳以上
※隔年(2年に1度)の実施
1,740円

<参考>八潮市 各種検診のご案内

*東京都 足立区(六町駅 青井駅 北千住駅)

<医療機関検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
問診・マンモグラフィ撮影 40歳以上
※隔年(2年に1度)の実施
500円

<参考>足立区 令和2年度がん検診のご案内

*東京都 荒川区(南千住駅)

<集団検診>
誕生月の約1か月以上前に、区から対象者に「検診のお知らせ」を郵送されます。その同封の申込はがきに乳がん検診と受診希望日を記入して申込むシステムとなり、検診場所は「荒川区がん予防・健康づくりセンター」のみです。

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
問診・マンモグラフィ 40歳以上の偶数年齢 無料

<参考>荒川区 乳がん検診

*東京都 大東区(浅草駅 新御徒町駅)

<集団検診(検診車)>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
問診・マンモグラフィ検査 40歳以上
※隔年(2年に1度)の実施
無料

<医療機関検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
問診・マンモグラフィ検査 40歳以上
※隔年(2年に1度)の実施
無料

<参考>大東区 乳がん検診(無料)

*東京都 千代田区(秋葉原駅)

受診対象者には受診券が送付され、区内指定医療機関で受診できます。72歳以上の偶数年齢で、過去3年以内に乳がん検診を受けた方は送付対象となりますが、72歳以上の偶数年齢で過去3年以内に乳がん検診を受けていない方は受診券の送付対象外です。
<医療機関検診>

検査項目 健診年齢 料金(自己負担額)
問診・視触診・マンモグラフィ検査 40歳以上の偶数年齢 無料

<参考>千代田区 乳がん検診
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乳がん検診の持ち物と注意事項

<持ち物・服装チェックリスト>
☐健康保険証
☐乳がん検診に必要な料金
☐乳がん検診の受診券
☐診察券(受診したことがある指定医療機関で検診の場合)
☐着脱しやすいセパレートタイプの服がオススメ
☐アクセサリーは外す
☐長い髪はまとめる
☐制汗剤はつけない、または落とす


<事前申告・相談が必要な場合>
☐妊娠中・妊娠の可能性がある
☐授乳中・卒乳直後である
☐豊胸手術をしている
☐ペースメーカーを付けている

乳がん検診の際には、検査着が用意されている場合やバスタオルを巻いての検診になるため、上下別の洋服や着脱しやすい洋服がオススメです。ネックレス、イヤリング、ピアスなどのアクセサリーは検診前に外すことになるため、貴重品管理に不安がある場合は極力つけていかないことをオススメします。長い髪はマンモグラフィに映ってしまうため、後ろにまとめます。制汗剤はマンモグラフィで白く映ってしまうことがあるため、当日はつけていかない、またはよく落としましょう。
妊娠中・妊娠の可能性がある場合など、自治体の乳がん検診を受診できないことがあります。事前申告し、必要に応じて担当医と相談しましょう。
※自治体・検診方法によって異なる。
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乳がんのセルフチェック方法


Check Point
□乳房の変形や左右差がないか
□しこりがないか
□ひきつれがないか
□えくぼのようなへこみがないか
□ただれがないか
□出血や異常な分泌物がないか

・『入浴前』に鏡のまえで
① 両腕を下げた姿勢で、乳房や乳頭を観察します。
② 両腕を高く上げた姿勢で、正面・側面・斜めから乳房を観察します。
③ 乳頭を軽くつまみ、血のような分泌液がないか調べます。

・『入浴中』にバスルームで
① 皮膚の凹凸がよくわかるよう、手に石けんをつけて滑りやすくしておきます。
② 腕をあげ、乳房の表面に渦巻きを描くようにして、しこりやこぶなどがないか調べます。
指先をそろえてわきの下に差し入れ、リンパ節が腫れていないか確認します。

・『おやすみ前』にベッドのうえで
仰向けに横たわります。(肩の下に薄いクッションなどを敷くと調べやすくなります)
① 腕を上げて、乳房の内側半分を指の腹で軽く圧迫しながら調べます。
② 腕を下げて、乳房の外側半分を指の腹で軽く圧迫しながら調べます。
③ わきの下に手を入れ、しこりがないか指の腹で調べます。

引用: がんの種類別情報乳がんを学ぶ 乳がんと早期発見乳がんセルフチェック

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まとめ

補助制度をうまく活用することで、定期的な乳がん検診を通常より安い料金受けることができます。申し込み方法は、自治体から郵送されるハガキの案内に従い決まった日時に集団検診を行う方法や指定医療機関に電話で予約をする方法、自分からネット上で申し込みを行うなど様々です。自治体によっては、在住している市区町村とは別の近隣市区町村が指定医療機関になっている場合もあり、近くの実家に子どもを預けて検診を受ける際など自分の都合に合った場所で検診場所を選ぶこともできます。医療機関によっては、子宮がん検診と同じ日に予約を入れることも可能なため、思い立ったときに各自治体の乳がん検診について確認しておきましょう!
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【医師プロフィール】

高田護 
たかだまもる

千葉大学医学部附属病院 ブレストセンター乳腺外科 医師
日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影医師
日本乳癌学会乳腺認定医

3児の父
大学スポーツ:ボート
やってみたいこと:ぬか漬け
アメリカで覚えたこと:フルーツカット
【経歴】
北海道旭川市出身
千葉大学医学部卒
アメリカ留学経験あり
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