卵巣の病気の原因と初期症状|知っておきたい!女性の病気と不妊 第二回〜卵巣のう腫・子宮内膜症・奇形腫・多嚢胞性卵巣・早発卵巣不全・卵巣がん

女性の皆さん、きちんと自分の身体のこと知っていますか?
妊娠・出産時に産婦人科医の先生に聞きたくても「忙しそう」「こんなこと聞きにくい」などで聞けなかったことがあると思います。
また、子育てで忙しく、産後変化しつつある女性の体や不調について知る機会がなかなかありません。

女性特有の様々な体調不良や異常にどんな病気が潜んでいるのか、「女性特有の病気」、「不妊治療」について、不定期でコラムをお届けいたします!

曽根原弘樹
株式会社ゲノムクリニック代表取締役
千葉大学医学部附属病院産科婦人科・遺伝子診療部 医師

*先生のプロフィールは記事末尾をご参照ください
株式会社ゲノムクリニックHP
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第一回子宮の病気の原因と初期症状

第二回コラム「卵巣の病気の原因と初期症状」
第一回のテーマ「子宮の病気」に続いて、今回は「卵巣の病気」を取り上げます。
いくつかの主な病気と重要なサインをお伝えします。

卵巣の構造

卵巣は子宮の横に左右1つずつ付いている親指の頭ほどのサイズの小さな臓器です。小さな臓器ですが、子宮と同様に女性にとってとても重要な臓器です。
月に1回の排卵を閉経まで続け、赤ちゃんのもととなる「卵」を生み出します。また、多くのホルモンを作り出し、女性のリズムや健康を形づくります。
一方で、やはりその複雑な機能からか、病気が起こってしまうこともしばしばある臓器です。
今回も主な病気の種類と、それに気づくサインについてお伝えいたします。

卵巣の病気とは?初期症状・原因・治療法

知っておきたい卵巣の主な病気について、原因や初期症状、治療法などをまとめました。

*卵巣のう腫

<特徴や原因>
卵巣に「お水」がたまってしまう状態です。月に1度の排卵の前には卵巣に直径2cmほどのお水がたまります。これは正常な状態ですが、別に数cm大のたまりができてしまうことがあり、原因としては排卵障害や出血などが考えられます。

<初期症状>
通常は自然に吸収されて気づくことはありませんが、ときに月経不順や腹痛の原因になることがあります。また、どんどん大きくなってしまう場合には処置が必要な例もあります。腹痛や月経不順が続く場合は一度婦人科でエコーを見てもらうと安心です。

<治療法>
多くの場合では経過観察だけで次第に吸収されて目立たなくなります。しかしどんどん大きくなるか、症状がつらい場合はピルによって卵巣を休ませると消えることがあります。それでも治らないときは外科的処置や穿刺(せんし)・吸引を行うことがあります。

*子宮内膜症(チョコレートのう腫)

<特徴や原因>
子宮内膜症は、本来は月経とともに子宮の中から剥がれ落ちる組織が別の場所にできてしまう病気です。卵巣内にできてしまった場合、出血がたまることによりまるで「チョコレート状」に見えることからチョコレートのう腫とも呼ばれます。よくある病気であり、多くの方が治療されています。

<初期症状>
サインとしては重い月経痛があります。また不妊の原因となることもよくあります。チョコレートのう腫が大きくなってしまうと、低い確率ではありますが、がん化することもあるので早めに見つけることが大切です。

<治療法>
治療法としては外科的処置以外にもピルやホルモン剤などで治せる場合があります。また妊娠によって月経が止まることを利用し、早めの妊娠を目指すことも治療の1つです。

*奇形腫

<特徴や原因>
卵巣にはさまざまな「できもの」が生じることがあります。その全ての種類をあげると多すぎますが、主なものの1つがこの奇形腫になります。卵巣の中に髪の毛や歯や皮膚などの組織ができてしまう病気です。
とても不思議ですがよくある病気であり、漫画『ブラックジャック』のピノコのモデルともなっています。
原因はよく分かっておらず、実は私の研究テーマの1つでもあります。

<初期症状>
症状はあまりないのですが、重いできものですので不意にねじれてしまい 突然の腹痛を起こすことがあります。検診などで卵巣エコーを見てもらっていれば、まず気づきますので、婦人科検診ではぜひ卵巣エコーも受けると安心です。

<治療法>
薬で小さくなる腫瘍ではないので、基本的には手術になります。腹腔鏡での手術が多いので、傷は大きくならない例が多いです。

*多嚢(のう)胞性卵巣(症候群)

<特徴や原因>
卵巣は月に1度ほどのペースで排卵を行い、女性のリズムを作っています。多嚢胞性卵巣はこのペースが崩れてしまい、排卵できない卵が卵巣内にたまっていってしまう病気です。(実際にはより複雑な状況ですが、おおむね正しい表現です)。そのためにエコーで見ると、のう胞がたくさん見え、卵巣にあたかも真珠のネックレスのようなたまりが見えます。

<初期症状>
症状としては月経不順、それに伴う不妊症です。基礎体温表をつけていただくと、排卵がうまく起こっていないため二相性(高温期や低温期といった一定期間に渡って温度変化があること)が見られないことで気づける例もあります。

<治療法>
治療法としては卵巣を刺激し排卵を促す薬により状況を改善できる場合があります。軽度の場合は少量の飲み薬で十分な効果が期待できます。ただ重度の場合は、注射による治療が必要となり、体質を改善する薬を併用します。

*早発卵巣不全

<特徴や原因>
通常は40歳代後半まで排卵があり(妊娠ができるというわけではありません)、50歳前後で閉経を迎えます。
一方、早発卵巣不全ではさまざまな理由によりこの期間が早まってしまい、場合によっては 30歳代前半で閉経を迎えてしまう病気です。
原因は細かくは解明されていませんが、自己免疫が関係していると考えられています。

<初期症状>
サインとしては 月経不順(まれにしか月経がこない)や不妊になります。

<治療法>
残念ながら根本的な治療法がなく、まれにおこる排卵に期待するしかありません。iPS細胞など画期的な治療法の完成が望まれます。

*卵巣がん

<特徴や原因>
卵巣にできる病気で最も怖いのが、この卵巣がんと言っても過言ではありません。
卵巣はお腹の中でブラブラとしている臓器なので症状が出にくく、また他の臓器とも近いため、早期にがんが進行してしまいます。
卵巣がんの5年生存率はいまだに3割台と低く、最も怖いがんの1つと言って良いかもしれません。
原因は遺伝子の異常です。実は卵巣がんの25%は生れながらの遺伝子のリスクにより発症することが分かっています。柏の葉ゲノムクリニックが提供しているBRCA Seq(ブラカ・シーク)という検査はまさにこのリスクを判定します。ご興味ある方はぜひ受けてみてください。

<初期症状>
卵巣がんは症状に乏しいことで有名です。ただ、腹痛やお腹のはりで気づく例もあります。定期的な婦人科検診の際に偶然、早い段階で見つかり治療に成功する例も見られますので、普段から自分の体に注意を向けること。また不安な症状があれば婦人科を受診することが助けになります。

<治療法>
治療法は手術が主なもので、大きな手術になることが多い病気です。進行して見つかることが多いので、抗がん剤が併用される場合があります。

早期発見のためにも定期健診に行きましょう!

以上、卵巣の病気をいくつかご紹介しました。
初期症状は以下の通りです。

・卵巣のう腫;腹痛や月経不順
・子宮内膜症(チョコレートのう腫);重い月経痛
・奇形腫;突然の腹痛
・多嚢胞性卵巣(症候群);月経不順、それに伴う不妊症
・早発卵巣不全;月経不順(まれにしか月経がこない)や不妊
・卵巣がん;症状に乏しいが、腹痛やお腹のはりで気づくこともある

いかがでしたでしょうか? 今回挙げた卵巣の病気はごく一部です。
医師国家試験でも卵巣の病気は覚えるのが難しい分野であるくらい、多様な病気と症状が起こります。
第一回と同じアドバイスになってしまいますが、「何かおかしいな」という症状がある場合には、ぜひ近くの婦人科を受診してください。また今月から、これまでは遺伝子解析のカウンセリングルームとして使っていた柏の葉ららぽーと6階KOIL608号室を診療所として登録し「柏の葉ゲノムクリニック」として開業いたしました。
遺伝子解析といった最先端医療をご提供するだけでなく、妊活相談など皆さまの日々の健康に関するお力にもなりたいと考えておりますのでお気軽に受診ください。


【医師プロフィール】

曽根原弘樹 
そねはらひろき

株式会社ゲノムクリニック代表取締役
千葉大学医学部附属病院産科婦人科・遺伝子診療部 医師

【経歴】
神奈川県川崎市出身
中学・高校は都内へ
筑波大学で農学を学ぶ
東大柏の葉キャンパス大学院 生命科学専攻
千葉大学医学部編入学 医師免許を取得
川崎市で初期研修医を修了
千葉大学医学部産婦人科に入局。博士号取得
2018年、千葉大学発ベンチャー株式会社ゲノムクリニックHPを柏の葉に起業

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